7席しかない、この重厚なカンターの上で幾人が酒を呑んだんんだろう。
昭和29年に創業、一度リニューアルはしてあるものの、
ここに存在するカウンターはそのままだ。
ステンドグラスのドアを開き一歩足を踏み入れると、
まるで豪華列車のバーのような重厚感とエレガントな雰囲気に包まれる。
「落水荘と、F・L・ライトの環境共生手法」という三沢先生の講演を聞く。
その後、ドイツビールで乾杯、そして食事。一頻りアルコールを入れたあと、
作家川端康成や三島由紀夫、池波正太郎も愛した場所に向かう。
ラッキーだ。
客は3人だ。
入れる。
気が付けば、この歴史的カウンターに、三沢先生、芝池先生、大橋先生と私の4人。
私は、「酔」という状態に責任をなすりつけ、聞きたいことを聞いた。
まるで、デリカシーって言葉の存在自体を知らないかのように。
フランク・ロイド・ライトじゃなく、
アントニン・レーモンドのことを、
しつこいくらいに。
三沢先生は、レーモンドが亡くなった後に、レーモンドの本を出そうとした。
しかし、レーモンド事務所の先輩である吉村順三に、こう云われたそうだ。
「三沢くん、死人に鞭を打つようなことはするな!」
本意では無い。
ただ、アントニン・レーモンドを多くの人に知ってもらいたかったのだろう。
レーモンドのお金でアメリカに留学した三沢先生は、アメリカで多くを学んだ。
三沢先生にとってレーモンドは、本当の恩師であり父であったはずだ。
結局、吉村さんが亡くなった後、本を出しまくる。笑…。
歴史的な空間で、有名建築家の史実を聞く、幸せだ。
なかには、
あれ、
もしかして、
これって、
いいのか、
今、凄いこと聞いちゃったぞってことが・・・。
幸せだ。
早朝に起きて、車を飛ばし、朝8時には何もなかったように
事務所で仕事をする。誰にも言わない私だけの秘め事だ。幸せだ。
っていう告白。