「加瀬くん がなにか言ってます。」

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「加瀬くん がなにか言ってます。」

「ヌックぬく」と言われています。

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ハヤシ工務店 猫の下僕担当 加瀬です。

だんだんと冬が近づいてきましたね。
朝晩のひんやり具合がじわじわ強くなってきて、布団から出るのがいよいよ修行のようになってきました。
一方で、日中はまだ太陽が頑張ってくれていて、窓越しに入ってくる日差しがやけに暖かい。
この“寒いのに暖かい時間が混ざる”季節、嫌いじゃないんですよね。

そんな、ちょっと気持ちの良い休日の昼下がり。
我が家の猫が静かに段ボールの中で落ち着いているじゃぁありませんか。
あの狭さを選ぶ理由を聞いてみたい。
絶対もっと快適な場所があるはずなのに。でもまぁ、段ボールにすっぽり収まって、目を細めながら落ち着いているその姿を見てしまうと、
「ああ、そこが今日のお気に入りスポットなのね」と言わざるを得ません。

猫はなぜ狭いところが好きなのか

猫は本当に狭いところが好きですよね。
箱、かご、袋、押し入れ、隙間、布団のトンネル……なんならわざわざ狭いところを探してまで入っていく。

この“狭さへの執着”ってなんなんでしょうね。
安全だから?
落ち着くから?
暖かいから?
たぶん全部なんでしょうけど、見ているこちらとしては「そんなにギュウギュウで大丈夫?」と突っ込みたくなります。まぁ、猫は液体なので問題はないのでしょう笑

そして思うんですよ。
猫が段ボールに入りたがる気持ちって、人に置き換えると、あれ、かなり“ヌック”に近いよな、と。

住宅で注目される「ヌック」というおこもり空間

近ごろ住宅の世界では、「ヌック」という小さなおこもり空間が人気です。
階段下のスペースだったり、窓辺の小上がりだったり、ほんの1~2畳くらいの小さな空間をくぼませてつくるやつですね。

あれ、まさに“人間用の段ボール”なんですよ。
もちろん段ボールと言ってしまうと語弊はありますが……
「狭い」「囲われている」「落ち着く」「居心地がいい」という条件は、猫が箱に入り込む理由と驚くほど一致している。

広いリビングももちろん快適なんですが、人って広さよりも“居場所が定まる”ことのほうが安心するのかもしれません。
ちょっと暗めでも、少し狭くても、そこだけ温度と空気が落ち着いていて、身を預けやすい。

なんというか、
「人も猫も、結局は“自分の巣”を持ちたい生き物なんだなぁ」
と感じる瞬間です。

おこもり空間がもたらす心理的な効果

ヌックを取り入れたお宅では、よく「ここに座ると落ち着くんですよ」とか
「子どもがなぜかずっとここにいます」
なんて声を聞きます。

そりゃそうですよね。
視界が限定されて、体を包むような安心感があって、ちょっと暖かくて。

リビングのど真ん中よりも、端っこや少し引っ込んだ場所のほうが“自分の場所感”が強くなるんですよ。
ここが自分の席。
ここに座るとスイッチが落ち着く。
そんな感覚が自然と生まれる。

そう考えると、猫の段ボール選びも立派な空間デザインなんじゃないだろうか……
本人(猫)たちはそんなつもりゼロでしょうけれど。

冬の訪れが“おこもり欲”を加速させる

そしてまた、冬に向かうこの時期は、おこもり空間のありがたさがいつも以上に増すんですよね。
外の空気がキリッと冷たくなってきて、「じゃあ家の中でどこに居ようかな」と考えると、自然と暖かくて囲われた場所を選びがちになる。

猫も同じで、日向や段ボール、布団のトンネルといった“閉じた暖かい場所”に移動が増えてくる。
本能的に、快適な熱環境を求めるわけです。

つまり、
冬=おこもり空間の旬
なんですよ。

住宅設計にも“猫的視点”があってもいい

こうして猫の様子を観察していると、住宅設計って、もっと“猫の視点”があってもいい気がします。

広々した空間も大事。
明るさも大事。
動線の効率も大事。

でも、それだけだとどこか味気ない。
「ここにいたくなる理由」がちゃんとある場所をひとつ作ってあげると、その家の居心地はぐっと深まる。

・階段下のヌック
・窓際のベンチ
・本棚に囲まれた小さな読書コーナー
・天井を少し低めにしたスペース

どれも、猫が箱に入る理由と似ているんですよね。
狭いから落ち着く。囲われているから安心する。そこだけ微気候ができる。

猫は本能でやっていることを、人間は設計で再現しようとしている、と考えるとちょっと面白いです。

猫に学ぶ「居心地の正体」

結局のところ、居心地って広さだけでは決まらなくて、
「自分が安心できる環境かどうか」
これに尽きるのだと思います。

猫がせっせと段ボールに入り込む姿を見て、
人間だって同じように“囲われた場所”を求めてしまうのは、本能レベルで共通なんだろうなと感じました。

冬に向けて寒さが深まるにつれ、我が家でも“猫の段ボール”のようなヌックを作りたくなっています。
なんなら猫とシェアする形でもいいかもしれません。
狭い空間でぬくぬくしながら、お互いに気配を感じ合う冬の暮らし。
ちょっと悪くないですよね。