ハヤシ工務店 広報の“和”担当 加瀬です。
先日、釣りのあとに友人をうちに招いたんです。釣果は聞かないでください。
まあそれは置いておいて、その日の主役は、釣った魚じゃなくて——畳でした。
リビングの一角にある、少し上がった畳のスペース。
買ってきた昼食をすませた友人はそこで「なんかいい。」と目を細めて、しばらくそのままじっとしていました。
実家に畳があったわけじゃないそうですが、それでも、どこか心がほどけるような落ち着きを感じたようです。
実際その日は風の通りもよく、南側の掃き出し窓から北へ向かって、ふわっと心地よい風が抜けていきました。
畳の匂いとその風が相まって、なんとも言えないゆるさを生んでいたんですよね。
これが「日本の暮らしの知恵」ってやつなのかと、あらためて思わされた瞬間でした。
畳空間があると、なぜかみんな集まる
正直、リビングの一角の畳スペースは以前は疑問がありました。
フローリングで統一したほうが掃除もラクですし、家具の配置もしやすい。
それに、和室は和室で別室にしっかりあるので、住み分けの意味でも、、、。
でも、やはりいいものですね。
来客があっても、自然とそこに腰を下ろしてくれるし、寝っ転がる人もいたりして(釣りの友人)、まるで縁側のような使われ方をするんです。
不思議なことに、ソファのほうが空いてるのに、畳に座るんですよ。
体の重心が低くなって、床に近づくと、なんとなく気持ちも落ち着くのかもしれませんね。
もちろん、ちょっとゴロンとできるのも大きい。
畳って「座れる床」であり「寝られる床」であり「ごはんも食べられる床」なんですよね。
椅子やテーブルがなくても成り立つ、すごく懐の深い床材だと思います。
風の道と、畳の居場所
友人が感動していたのは、どうやら風の心地よさも大きかったみたいです。
うちのリビングは、南北に風が抜けるように設計しているのですが、その風がちょうど畳のある場所をやさしく撫でていく。
畳って、なんとなく風と相性がいい気がします。素材が呼吸してるからか、湿気がこもらず、座っていてもべたっとしないんですよね。
梅雨時期や夏の暑い時期でも、そこそこここちいい。
それに、畳の上に腰を下ろすと、目線が低くなるぶん、天井が高く感じられて、空間に広がりが出るんです。
ちょっとした段差でエリア分けができて、フラットな空間よりも居場所のバリエーションが増えるのも一興ですね。
現代の暮らしに、畳をどう取り入れるか
とはいえ、畳のある暮らしに憧れつつも、どう設けていいか悩む方も多いのではないでしょうか。
最近では、モダンな空間にも合う「縁なし畳」や、耐久性に優れた和紙畳なども増えていて、和室じゃなくても畳を取り入れやすくなっています。
リビングにちょっとした畳コーナーをつくることで、「床で暮らす」という感覚を住まいに戻すことができる気がします。
子どものプレイスペースとしても重宝しますし、大人が昼寝するにもぴったり。
来客時には座卓を出せば応接スペースにもなります。
ひとつの空間が、場面によっていくつもの表情を持ってくれるのが、畳の強みかもしれません。
「懐かしい」と「新しい」が同居する場所
「なんだか懐かしい」と言っていた友人の言葉が、いまも頭の中に残っています。
その人にとっての原風景ではないはずなのに、心のどこかが反応する——畳の持つ力って、そういうところにあるんじゃないかなと思います。
それはきっと、「人が地べたに近いところで暮らしていた頃の記憶」みたいなものなのかもしれませんね。
靴を脱いで、床に座って、風に吹かれて。
そんな素朴な暮らし方が、私たちのどこかに根づいていて、それを思い出す場所として、畳が存在しているような気がするのです。
うちの上げ畳スペースも、日常のなかの「ちょっとだけ特別な場所」として、これからも活躍してくれそうです。
とりあえず、次に友人が来たときには、畳の上で冷たい麦茶でも出しておこうかなと思っています。
(お酒が好きな人なのでそっちの方がいいかな笑)