ハヤシ工務店 広報の収穫担当 加瀬です。
先日の親戚の植木屋さんお手伝いの際、作業をしていると、ひときわやわらかい色をまとったキレイな花がふと目に入ってきました。
「あれ、桜…ではないな」と思って近づいてみると、なんとアーモンドの花でした。
正直なところ、アーモンドの“花”というものを、これまであまり意識したことがなかった気がします。ナッツとしてのイメージはあっても、木としての姿や、ましてや花の印象はほとんどありませんでした。
ですが、実際に目の前で咲いているそれは、桜や梅、桃と同じ時期に咲く花として、まったく見劣りしない、むしろどこか控えめで上品な美しさを持っていました。
そして何より、「これ、ちゃんと実がなるんだよな」と、少し不思議な気持ちになります。
花を楽しめて、さらに実も収穫できる。日本でもホームセンターなどで手軽に手に入る。
なんだか、ずいぶんと“できるやつ”だなあと、そんなことをぼんやり考えていました。
美しさの奥にある“もうひとつの役割”
花がきれい、というだけでも十分に価値があるはずなのに、そこに「実がなる」という機能が加わると、途端にその存在の見え方が変わってきます。
ただ眺める対象だったものが、少しだけ“暮らしに寄り添うもの”に変わるような感覚です。
この感覚、どこかで覚えがあるなと思ったのですが、おそらくそれは建築の「素材」に対する感覚に近いのかもしれません。
住宅の中には、ただそこにあるだけではなく、何かしらの役割をもう一つ担っている素材が意外と多く存在しています。
例えば、壁紙。
一見すると単なる仕上げ材ですが、最近では臭いを吸着してくれる機能を持ったものもあります。生活していればどうしても発生する生活臭や湿気、それらを少しだけ和らげてくれる存在です。
また、子供が自由に絵を描ける仕上げ材なんかもありますよね。
「汚れるからやめて」と言っていた壁が、「好きに描いていいよ」と言える壁に変わる。
それだけで、その空間の使われ方や、家族の関わり方まで変わってくる気がします。
プラスアルファがつくる余白
こういった“プラスアルファの機能”を持った素材は、単に便利というだけではなく、暮らしの中にちょっとした余白を生み出してくれるように思います。
消臭機能のある壁紙があることで、少し気を張っていた部分が和らいだり。
落書きできる壁があることで、子供とのやり取りに余計な制限をかけずに済んだり。
機能が一つ増えることで、人の行動や気持ちに、ほんの少しの“ゆるみ”が生まれる。
それは数値では測れない価値ですが、日々の積み重ねの中では意外と大きな差になっていくのかもしれません。
アーモンドの木も、花を楽しむだけなら観賞用の木と同じかもしれません。
でも、そこに「実がなる」という要素が加わることで、育てる楽しみや、収穫する喜びが生まれる。
その分だけ、その木との関係性が少し深くなるような気がします。
素材選びという、小さな選択の積み重ね
住宅の設計や素材選びというのは、どうしても大きな判断の連続のように感じてしまいます。
間取りや構造、設備機器など、決めるべきことはたくさんありますし、どれも重要な要素です。
ただ、その中にある「素材」という部分に目を向けてみると、意外とこういった“ちょっとした機能”の選択肢が転がっています。
例えば、調湿機能を持った壁材。
例えば、傷がつきにくい床材。
例えば、光の反射をやわらかくする塗装。
どれも一つ一つは小さな違いかもしれませんが、それらが積み重なることで、その家の居心地や使い勝手に、じわじわと影響を与えていきます。
すべてを高機能なもので揃える必要はないと思います。
むしろ、「ここにはこういう機能があると助かるかもしれないな」といった具合に、自分たちの暮らしに合わせて選んでいくことが大切なのだと思います。
花を見て、素材を考える
アーモンドの花を眺めながら、こんなふうに建築のことを考えている自分に、少しだけ苦笑いをしてしまいました。
せっかくきれいに咲いているのだから、もう少し素直に季節を楽しめばいいのに、とも思うのですがね。
ただ、こうして自然の中にある“機能”に気づくことで、改めて建築の中の工夫にも目が向くようになるのは、悪くないことなのかもしれません。
花が咲き、実がなるアーモンドのように。
見た目の美しさと、暮らしに寄り添う機能の両方を持った存在。
住宅の中にも、そんな素材を少しずつ取り入れていくことで、日々の生活がほんの少し豊かになる。
そんなことを考えながら、またエッホエッホと植木の仕事をお手伝いしていました。
