ハヤシ工務店 広報のボール担当 加瀬です。
先日、サッカーファンの友人からお誘いを受けて、鹿島アントラーズの試合を観戦してきました。
実を言うと、私はこれまでスポーツ観戦に興味がなかったのです。テレビで流れていても、なんとなく眺めるくらいで、ルールも詳しくわからない。ところが、実際にスタジアムに足を運んでみると、これが全く別物でした。
駆け抜ける選手たちの迫力、サポーターの一体感、そしてゴールが決まった瞬間の地鳴りのような歓声。身体の奥まで響いてくる感覚は、画面越しでは到底味わえないものでした。ああ、これが「生で観戦する」ということかと、感動と同時に驚きを覚えました。
特に驚いたのは、スタジアム内にアウェー側サポーターが立ち入りできないエリアが設けられていることでした。友人曰く、サッカーかと思ったらプロレスが見れることもあると、、、。
はは、、、。
ゴール裏に仕掛けられた広告
そんな中で、ふと気づいたのがスタジアム内の広告です。観客席の周囲をぐるりと囲むように広告が並んでいるのですが、とりわけ目を引いたのはゴール裏にあるデジタル広告でした。
ゴールシーンといえば、スタジアム全体の視線が集中する瞬間です。そこに合わせるように広告が表示されると、自然と視界に飛び込んでくる。意識して見ていなくても、ゴールを見た瞬間に同時に広告の存在を「見てしまう」のです。
感心しました。人が注目する対象と広告を重ねることで、視線を自然に運び、情報を印象づける。単なる看板の設置ではなく、心理的な流れを計算しているのだと実感しました。
部屋の中での視線誘導
スタジアムの広告を見ながら、ふと自分の部屋のことを思い浮かべました。部屋の印象もまた、視線の流れによって大きく変わるものです。
たとえば、部屋に入ったときに最初に目に入る場所。そこに観葉植物を置けば、自然と部屋全体に「緑のある暮らし」という印象を与えることができます。逆に、そこに雑然とした荷物があれば、部屋全体が散らかって見えてしまう。視線の最初の着地点が、その空間の印象を決めてしまうのです。
また、ソファやダイニングテーブルの位置も重要です。座ったときにどこを眺めるか。壁を正面にするのか、窓の景色を取り込むのかで、日々の気分が変わってきます。家具の配置は単に機能性だけでなく、視線の流れをコントロールする要素でもあるのだと感じました。
視線の誘導で「広さ」を演出する
視線誘導は、部屋の広さの感じ方にも大きく影響します。
奥行きを強調するように照明やアートを配置すると、実際よりも空間が広く見えることがあります。たとえば、廊下の突き当たりに明るい照明を置けば、自然と視線が奥へと伸びて、空間に広がりを感じやすくなります。
逆に、天井近くにカーテンレールを設けて長いカーテンを垂らすと、視線が上へ導かれて天井が高く感じられます。これは小さな工夫ですが、日常生活の中での心地よさに直結する効果があります。
スタジアムで「ゴール裏に視線が集まる」仕組みを実感したことで、改めて住宅でも「人の目線は自然と誘導できるものなのだ」と考えさせられました。
生活動線と視線の交わり
視線誘導を考えるとき、同時に思い浮かぶのは「生活動線」です。
人がどのように空間を移動するか、その途中でどこに視線が向かうか。この二つは重なり合っています。
たとえばキッチンからダイニングに料理を運ぶとき、通路の先に窓があれば、自然と外の景色が視界に入ります。これだけで食卓に向かう時間が少し心地よくなる。あるいは、玄関からリビングに入ったときに正面にお気に入りのアートがあると、それだけで「帰ってきた」という安心感が増す。
視線の誘導は、ただ見た目を整えるだけでなく、日々の動きや暮らしの気分に影響を与えているのだと気づきました。
暮らしの中の視線設計
サッカー観戦は、私にとって初めての体験でした。スタジアムで味わった迫力や一体感は、テレビ観戦では到底得られないものでした。そして、ふと目にしたゴール裏の広告が、視線誘導という建築的なテーマを思い出させてくれました。
人の視線は自然に動くものですが、その流れを少しだけ工夫することで、空間の印象は大きく変わります。スタジアムでの広告と同じように、住宅のインテリアや間取りも「どこに目が行くか」を考えることで、より心地よい暮らしを演出できるのだと思います。
スポーツ観戦から暮らしのヒントを得るなんて思ってもみませんでしたが、こうして振り返ると「視線のデザイン」は、イベントの場でも日常の部屋でも共通する普遍的なテーマなのだと感じました。