ハヤシ工務店 広報の笹担当 加瀬です。
今年も、地域の七夕祭りに行ってきました。
毎年のことながらやはりこの季節ならではの風情がありますね。
この空気感や御囃子で、自然とこの蒸し暑さも季節の味に感じるのは不思議ですね。
日が暮れるにつれて、商店街には提灯の灯りがゆらゆらと灯りはじめ、浴衣姿の子どもたちがやんややんやとはしゃぐ姿を横目に、
私はといえば、お祭り会場の舞台となる街並みに目を奪われていました。
そう、この祭りの舞台となっているのは、昔ながらの商店街。
そしてそこに並ぶ建物には、昔ながらの「店舗併用住宅」がありました。
商いと暮らしが地続きだったころ
表は八百屋、裏は居間。
一階が店、二階が寝室。
そんな暮らし方が、かつては当たり前にありました。
僕にはあまり馴染みがないですがね笑。
祭りの中を歩きながら軒先を眺めていると、建物そのものが
そのまま歴史を語っているようで、なんだか胸が熱くなります。
プライバシー重視の現代とのギャップ
一方で、現代の住宅はというと、どちらかといえば「切り分け」が重視される時代。
特にプライバシーやセキュリティといった観点から、生活空間と仕事空間は明確にゾーニングされる傾向があります。
その点、昔の店舗併用住宅は、表から裏、仕事から暮らしへの導線が非常にコンパクト。
とても効率的ですが、その分、家族以外の人の気配が生活のすぐそばにある。
現代人にとっては少し落ち着かないと思われるかもしれません。
それでも、なんとも言えない温かみがあるのはなぜでしょうか。
人の出入り、会話、におい、音…。
そうしたものが日々の生活に自然に溶け込んでいたからこそ、生まれていた「まちの表情」なのだと思います。
間取りの工夫が「心地よさ」をつくる
もちろん、今の時代に店舗併用住宅を新築する場合は、プライバシーへの配慮も欠かせません。
たとえば、店舗スペースはあえて通りから奥まった位置に設けたり、外部と直接つながる動線と家族専用の動線を分けたりするなど、建築的な工夫が必要です。
また、二世帯住宅に近い設計を取り入れて、上下階で機能を分離するスタイルも人気があります。
店舗部分は玄関を別に設けて、お客様用と家族用のアプローチを区別することで、生活感を必要以上に外へ出さない配慮もできます。
かつてのように「全部ひとつながり」ではなく、空間を仕切りつつも、緩やかに行き来ができる——そんな柔らかさのある間取りが、今の暮らしに合った店舗併用住宅のかたちかもしれません。
商いと住まい、その未来
祭りの帰り道、一緒に祭りに行った友人と少しだけ話をしました。
「この街並みの担い手も高齢化が進んでる。若手で活かせればね。」と。
実際、店舗併用住宅は、住みながら商いができるという点で、コストパフォーマンスに優れた選択肢とも言えます。
特に、パン屋さん、コーヒー屋さん、美容室や小さなギャラリーなど、自分のペースで営む仕事にはぴったりのスタイルかもしれません。
実際、この商店街の一角でもその動きが見られます。
また、リモートワークが一般化した今では、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)的な使い方で店舗スペースを活用する事例も増えてきています。
変わる街と、残したい記憶
七夕の飾りが風に揺れる商店街。
そこで目にした昔ながらの店舗併用住宅たちは、時代の流れの中で少しずつ姿を変えながらも、地域の顔として、静かにたたずんでいました。
その風景に触れて、あらためて「家とは、ただ住むだけの箱ではなく、地域とのつながりを持った生きた空間なのだ」と感じさせられました。
懐かしさと、未来の暮らしを繋ぐものとして——
店舗併用住宅という住まい方が、これからまた静かに見直されていくのかもしれません。