ハヤシ工務店 広報の排水担当 加瀬です。
ここ最近、梅雨以上に雨の降り続く日が多く、しかも一度に降る雨の量もかなり多い。
そんな日が続いています。
各地で豪雨による被害や冠水のニュースを目にすることも増えましたし、千葉県内でも、特定の地域では続けざまに冠水被害に見舞われている場所があります。
「また雨か……」
なんて思ってしまうくらい、今年は雨の存在感が強い気がします。
そんな先日の台風が過ぎ去った翌日。
所属している消防団に、冠水した場所の水抜きの依頼が入りました。
消防団の活動というと、火災や訓練などを思い浮かべる方も多いと思いますが、地域の状況によっては、こうした水害への対応をすることもあります。
今回も、冠水した道路の排水作業です。
そして実際に現場へ行ってみると……。
これが、かなり広い。
とにかく広い。とにかく水が多い
現場は、幸いにも消防車が通れないほどの深さではありませんでした。
とはいえ、かなり広い範囲が冠水しています。
水が土地を、道路を覆っている。
一見すると、ただそれだけの光景なのですが、実際にその場に立ってみると、なかなかの規模です。
消防車から排水を続けます。
ホースを伸ばして、水を抜いていく。
やっていること自体はシンプルです。
でも、やってもやっても、見た目の変化があまり分からない。
「……減ってる?」
「たぶん減ってる……よね?」
というくらい。
水位が劇的に下がるわけでもない。
目の前にある広範囲の水を相手にしていると、こちらがやっていることが、なんだかものすごく小さく感じてきます。
もちろん、少しずつは減っているのでしょう。
でも、広い。
そして、水が多い。
その「変化の分かりにくさ」が、実際以上に疲れを感じさせるんですよね。
忙しく動き回っているわけではないのに、妙に疲れる。
水って重いですし、自然現象のスケールってやっぱりすごい。
「こんな冠水は何十年ぶり」
現地に住んでいる方と少し話をする機会がありました。
そこで聞いたのが、「ここまで冠水したのは何十年も見ていない」という話。
これにはちょっと驚きました。
その土地に長く住んでいる方が、そう言う。
つまり、今回の雨は、それくらい普段とは違う規模だったということです。
ニュースで「記録的な大雨」と言われても、どうしても画面越しだと実感が薄い。
「すごい雨だったんだな」くらいで終わってしまう。
でも、実際にその土地へ行って、水の中で排水作業をしてみる。
すると、「あぁ、本当にすごい雨だったんだな」
と、ようやく実感できる。
やっぱり現場って強いですね。
土地には「住んでみないと分からないこと」がある
今回のことで改めて考えたのが、「土地の特性」です。
家を建てる時、土地探しをします。
駅から近い。
買い物が便利。
学校が近い。
道路が広い。
日当たりがいい。
土地の形がきれい。
価格が予算に合っている。
いろいろな条件を見ながら候補を絞っていきます。
もちろん、それは大事です。
でも、今回のような「雨が降った時、この土地はどうなるのか?」という情報は、普段の生活だけではなかなか分かりません。
晴れた日に土地を見に行って、
「いい土地ですね」と言っていても、その数か月後、大雨が降ったら、
「ここ、こんなに水が来るの?」となるかもしれない。
土地って、天気によって表情が変わるんですよね。
高い・低いだけでは分からない土地のクセ
冠水というと、「川の近くは危ない」
というイメージがまず浮かぶかもしれません。
もちろん、河川の氾濫による浸水リスクは土地選びで重要な確認ポイントです。
ただ、最近の千葉県内の大雨については、川から離れた場所や周囲より低くなった場所でも冠水が起きたと分析されています。ウェザーニュースの現地報告では、2026年9月の台風25号による冠水・浸水の確認地点のうち、約半数が「川から離れた高台のくぼ地」に分類されたとされています。
これ、ちょっと意外じゃないですか?
「高台だから大丈夫」
と思っていた場所でも、周囲より少し低くなっている場所に雨水が集まれば、冠水する可能性があります。
坂道の下。
交差点。
周囲より一段低い場所。
水路の近く。
こういう場所は、地図だけを眺めているだけでは、実際の水の流れまでイメージするのが難しいこともあります。
土地は「平面」ではなく「立体」で見る
土地探しをしていると、どうしても平面の地図で考えます。
この土地がここ。
道路がここ。
隣の土地がここ。
駅がこの方向。
そんな感じです。
でも、実際の土地には高低差があります。
道路が少し傾いていたり、隣の土地との間に高低差があったり、周囲より少しだけ低くなっていたり。
雨が降れば、水は低い方へ流れます。
当たり前のことなのですが、土地を探している時には意外と忘れがちです。
だからこそ、土地を見る時には、
「ここに大量の雨が降ったら、水はどこへ流れるんだろう?」と想像してみる。
これだけでも、土地の見え方が少し変わるかもしれません。
ハザードマップは「土地を見る前」にも使える
そして、土地探しをするなら一度確認しておきたいのが、やっぱりハザードマップです。
国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水や内水氾濫、高潮、津波、土砂災害などの情報を地図上に重ねて確認できる「重ねるハザードマップ」が公開されています。
さらに、自治体が公開しているハザードマップを探せる「わがまちハザードマップ」もあります。
これ、土地探しの段階で見ておくのもかなり大事だと思います。
「契約する土地が決まってから確認する」のではなく、
「候補地を探している段階で確認する」。
それだけでも、土地の見方が変わってきます。
ハザードマップだけを見ればいいわけでもない
ただし、ここで少し難しいのが、
「ハザードマップに色が付いていないから絶対安全」
というわけではないこと。
ハザードマップは非常に重要な情報ですが、想定される災害や前提条件があります。
実際、今回の千葉県内の冠水についても、洪水ハザードマップ上の浸水想定区域ではない場所で道路冠水が起きたケースが報告されています。
だからこそ、「ハザードマップを見る」だけではなく、
「土地の地形を見る」
「周辺の水路を見る」
「道路の高低差を見る」
「過去の災害や地域の話を聞く」
といった、いくつかの情報を組み合わせて考えることが大切なんでしょうね。
昔から住んでいる人の話は意外と重要
今回、現地の方から聞いた、「こんな冠水は何十年も見ていない」という話。
これも、ある意味では非常に貴重な情報だと思いました。
もちろん、一人の方の記憶だけで土地の安全性を判断することはできません。
でも、その土地で長く暮らしている人だからこそ知っていることはあります。
昔はこの辺まで水が来た。
この道は大雨になると水が溜まる。
あそこの交差点は昔から低い。
昔はここが田んぼだった。
そういった「地域の記憶」には、地図だけでは見えない情報が含まれていることがあります。
土地探しをする時、もし可能なら周辺の方や地元の不動産会社などに話を聞いてみる。
これも一つの方法なんだろうなと思います。
「今まで大丈夫だった」が一番難しい
そして今回、個人的に考えさせられたのが、「今まで大丈夫だった」という言葉です。
何十年も大きな冠水がなかった場所なら、「ここは大丈夫だろう」と思ってしまう。
実際、長い間何も起きていなかったのなら、そう考えるのも無理はありません。
でも、自然災害は過去とまったく同じ規模で起きるとは限りません。
雨の降り方も変わります。
土地の周辺環境も変わります。
道路や排水設備なども変化します。
だから、「昔は大丈夫だった」と、
「これからも大丈夫」は、同じではないんですよね。
今回、何十年も見ていなかったという規模の冠水が実際に起きたことで、そのことを強く感じました。
新築の土地探しでも「家以外」を見る
新築住宅を建てるとなると、どうしても家そのものに目が行きます。
どんな間取りにしよう。
どんな外観にしよう。
収納はどうする。
キッチンはどんなものにする。
断熱性能はどうする。
もちろん、それは楽しいところです。
でも、その家が建つ「土地」についても同じくらい考えておきたい。
いや、むしろ家を考える前だからこそ、土地について知っておきたい。
土地の形や価格だけではなく、
「この土地は、雨の日にどうなるのか」
「周囲より高いのか低いのか」
「水はどこから来て、どこへ流れるのか」
「過去にどんな災害があったのか」
そういう視点です。
災害に強い土地を探す、だけではなく
もちろん、「絶対に冠水しない土地を探そう」
というのは、現実にはなかなか難しいと思います。
災害の種類もいろいろありますし、自然現象を完全に予測することはできません。
だからこそ、「この土地にはどんな特徴があるのか」を知っておく。
そのうえで、家の配置や基礎、設備、避難経路など、必要な対策を考える。
土地と建物を別々に考えるのではなく、セットで考えていく。
これが大事なんでしょうね。
水が引かない一日を経験して
消防車で一日かけて排水しても、
「ちょっと水位が下がったかな」
くらいだった今回の冠水。
やっている側としては、なかなか途方もない作業でした。
でも、少しずつでも水が減っていくのを見ると、
「これだけの水を相手にしているんだな」
と、改めて自然の大きさを感じます。
そして、普段なら何気なく通っている道路も、
「ここは周囲より少し低いんだな」
「こっちに水が集まってくるんだな」
と、違った目で見るようになりました。
一度実際に冠水を経験すると、土地の見え方が変わる。
これはかなり大きなことだと思います。
「その土地を知る」ということ
家づくりでは、家の性能やデザインについてたくさん考えます。
でも、その家が建つ土地について知ることも、同じくらい大切なんだと思います。
晴れた日の土地。
雨の日の土地。
普段の土地。
災害が起きた時の土地。
いろいろな顔があります。
全部を見ることはできなくても、過去の記録やハザードマップ、地形、周辺環境、地域の人の話などから、少しずつ想像することはできます。
国土地理院の「重ねるハザードマップ」では、災害リスクだけでなく、土地の成り立ちを示す「地形分類」なども確認できます。
こうした情報を使って、「この土地ってどんな土地なんだろう?」と考えてみる。
それも土地探しの大切な一歩なんでしょうね。
家を建てる前に、土地と話をしてみる
今回の冠水対応を経験して、土地というものは思っていた以上に個性があるなと感じました。
普段は何の変哲もない道路でも、大雨が降れば水の通り道になる。
何十年も何もなかった場所が、一度の大雨で大きく姿を変える。
そして、その土地に長く暮らしている人は、地図には載っていない「土地のクセ」を知っている。
そう考えると、土地探しって、単純に「広さと価格と立地を見る」だけではないんですね。
どんな地形なのか。
どんな歴史があるのか。
水はどう動くのか。
過去に何が起きたのか。
そして、これからどんな暮らしをしたいのか。
家を建てる前に、まず土地を知る。
今回、一日かけて水と向き合ったことで、そんな当たり前のようで、なかなか考える機会のないことを改めて感じました。
……とはいえ、できれば次に土地の特性を実感する時は、消防車から排水ホースを伸ばしている時ではなく、晴れた日にゆっくり土地を眺めながらにしたいものです(笑)。
